基本的に鬼灯寮は仕丁に対しては共有資産と云う認識は持っているが、無下に扱うことなどは滅多にしない。する理由もないし、そのような行為を"恥"だと感じる吸血鬼が多いからだ。
大半の仕丁と祓師たちは頗る良好な関係を築いていることがほとんどだ。
しかし。
それでも、ほんの――本当に本当に極わずかな不届き者が、いる。
そんな不届き者たちの資産だった菊璃は、そこそこ幸せじゃない日々を過ごしていた。
いや、ちゃんと一日三食食べれたし寝るところにも服にも困らなかった。だから、あの日々を"幸せじゃなかった"と云うのは違うのかもしれない。
だが。

衣食住には確かに困らなかった。勉強だって、好きなだけさせてもらえた。
でも。
それだけだった。

『鬼灯寮の共有資産だから、世話をする』

それだけだった。
どうしたら、見てもらえるのだろうか。必要とされるのだろうか。
必死に考えて考えて。

敵の攻撃を打ち払う術を頑張って身につけた。
皆の支援ができるようにと、魔術も身につけた。

でも、それは結局。
仕丁ならできるもののほうが多くて。